非常時にどう対応するかで真価が問われます。
それは人も政治も企業も同じ。
学習塾のステップが2021年度2四半期の決算を発表しました。ひと言でいうと順調そのもの。
昨年来のコロナ騒動におけるステップの初動から現在に至るまでの手の打ち方が、株主の信頼に値するものだったのであらためてここで賞賛します。すばらしい。
信頼できた点
今回のコロナ危機への対応で良かったのは以下の3つです。
- 株主やその他の関係者に隠すことなく情報を開示したこと
- すばやく行動を変えたこと(オンライン授業への変更)
- お客さん(塾生)最優先で短期的に身を切ったこと
この3つについて深堀りしていきます。
株主やその他の関係者へ隠すことなく情報を開示したこと
危機対応では情報開示が大事。
ステップはまずこの点で素晴らしかった。
2020.2.28と4.13にコロナ対応で対面授業の一定期間取りやめを発表。
2020.4.28に第2四半期の決算発表をしたんですが、株主がビックリしないよう、わずかその1週間前の4.22に業績の下方修正を発表しています。
4.13から4.28までのたった9日間なので、もうそのまま決算で発表すればいいんじゃないの?とも思うんですが、わざわざ決算発表の1週間前に下方修正を教えてくれてます。
株主と企業の対話。株主もそういう理由なら下方修正もやむかたなしよねってなります。
悪い情報は早く出す。鉄則です。
すばやく行動を変えたこと(オンライン授業への変更)
対面授業ができないからオンライン授業へ切り替える。
でもそれって当たり前じゃないのって思うかもしれません。
ただステップはもともと対面授業にこだわってきた塾なんです。
たとえばコロナが起きる前の決算資料にはこう書かれてます。
当社は、「生徒たちの健全な成長を学習面で支援し、生徒たちの学力向上を通して社会に貢献してく」という基本理念の下、創業以来一貫して質の高い授業にこだわり続けています。
業界全体としては対面式の授業を映像授業に置き換える動きや個別指導化の流れが広がってますが、当社は教師が生徒と同じ空間を共有して行う双方向のライブ授業、ライバル同士が切磋琢磨しながら伸びていくクラス授業の良さを大切にしています。
2019年度決算短信から一部抜粋
ちなみにこの文言、1度きりではありません。毎回ステップの決算資料のはじめに書かれている言葉です。
ステップが今までいかに対面授業にこだわってきたかが分かります。
ところが。
4.13の「新型コロナウイルス感染症に対する対応及び業績への影響について」のなかでこう書かれてます。
4月7日に政府から発出された緊急事態宣言を受け、高校受験部門は4月8日から、大学受験部門は4月10日から、生徒が校舎に集まる形での授業を停止し、オンライン授業に移行いたしました。
現在全校舎で授業撮影を進めており、4月10日時点で6,069本の動画を配信、様々な課題の改善のために日々全力で取り組んでおります。
「2020.4.13新型コロナウイルス感染症に対する対応及び業績への影響について」から一部抜粋
6,069本・・すごい数です。
だって感染拡大を受け政府が臨時休校を要請したのは、3月2日です。
4月10日まで1ヵ月しかありません。
もし、3月の頭から授業の撮影を始めたと仮定して、6,069÷30日≒200本。
1日あたり200本の撮影。
こんなに対面授業にこだわっていた塾が、外部環境に合わせ一気にオンライン授業に舵を切る。
しかも1日に200本の動画撮影。それにかかる諸々の機材の手配。配信サービスの構築。
ステップの意思決定の速さと底力すごい。
お客さん(塾生)最優先で短期的に身を切ったこと
危機の時に身を切ることって大切。
一緒に戦う仲間からの共感を得られませんから。政治家見てて思いますよね。
先ほどのオンライン授業開始のお知らせにはつづきがあります。
授業の密度やフォローの体制等の充実度等を総合的に勘案し、通常のライブ授業と同じ授業料をいただくのは適切ではないと判断し、4月分の授業料は、通常よりも大幅に改定(値下げ)した特別授業料に変更することにいたしました。(学年により異なりますが、概ね約60~80%程度の値下げになります。)
「2020.4.13新型コロナウイルス感染症に対する対応及び業績への影響について」から一部抜粋
オンライン授業開始によって、おそらく撮影機材や配信サービスなどからコストはアップしてるはずです。
教師陣の授業1コマに対するインセンティブがどの程度かわかりませんが、もともとステップは質の高い授業を担保するため、教師をほぼ全員正社員としています。(多くの塾は非正社員が多いですよね)
つまり固定費はあまり削れない上に、配信のための一時的なコストだけ増加している状態。
その中での授業料6~8割の値下げです。
塾生のご家庭からは賞賛されたことと思います。
で、直近の決算はどうなった
決算の数字は以下の通りです。
オンライン授業に切り替えた2020年度の第3四半期は、売り上げ大幅減かつ大赤字。
ただその後コロナが落ち着くにつれオンライン授業とライブ授業のハイブリッド型にして業績を取りもどしてます。
2021年度第2四半期決算は前年同期比約1.5倍の営業利益になってます。本決算が楽しみですね。
コロナはまた再拡大してますが、こうした迅速な対応と株主への丁寧な説明がある限り持続的な成長に疑いはなく、ずっと応援していきたいなと思うのでした。
それでは。Go for it!